木村英子(れいわ新選組・比例代表)7月12日の演説内容
皆さん初めまして。
木村英子です。
本当だったら、今頃私は施設の中にいるはずでした。
なぜなら生活の全てに介護が必要な重度障害者は、親が介護できなくなれば施設しか行き場がありません。
私は生後8ヶ月の頃、障害をおって、物心ついたときから施設と養護学校で育ちました。
皆さんは、施設の実態を知っていますか?
施設では、起床から始まり、トイレや食事、入浴など全てが時間で決められており、外出も出来ず、時には職員からの嫌がらせや虐待を受けます。
健常者の人が当たり前に持っている『自由』が、施設では全て奪われてしまうのです。
そして、一度施設に入ってしまったら、地域へ出ることは容易ではありません。
私の友人の多くは、みんな今も施設にいます。
死ぬまで外に出ることができない人たちがほとんどです。
私も例外ではなく、養護学校を卒業したら施設に入れられるはずでした。
19歳の時、親や教師の反対を押し切って地域へ出てこなかったら、私はここで、皆さんの前で、話すことはなかったでしょう。
もし私が国会議員になったら、やりたいことが2つあります。
1つは、『介護保険』と『障害福祉』の『統合』の反対です。
障害福祉と介護保険を統合しようとしている国の流れの中で、地域で暮らしている障害者の生活は、今壊されようとしています。
皆さんは『介護保険』を知っていますか?
介護保険は、私たち重度障害者のために作られた制度ではありません。
私たち重度障害者に必要な制度は、“きちんと衣食住が保証され、生きがいを持って生きていける人権と権利が保証される制度”です。
しかし今の現状は、一人暮らしの障害者が65歳になったとたんに障害福祉が切られ、介護保険に組み込まれて、介護時間を減らされて、外出も出来なくなり、お風呂にも入れない仲間がいます。
自分でベッドに移れず、ずっと座椅子の上で寝ることしかできなくて、褥瘡(じょくそう)ができ、食事も一日一回しか食べられない。そんな悲惨な状況の人もいます。
介護保険の実態は、重度障害者に対して、一回の派遣時間がたった30分とか、多くても1時間前後。それでどうやって生きていけっていうのでしょうか?
介護者がいなければ生きていけない重度障害者は、全てを我慢しろというのでしょうか?
私は施設でずっと我慢をさせられてきました。
私はもう我慢することはできません。
今のままでは、せっかく命がけで地域へ出てきたのに、介護保険と障害福祉の統合によって、私たちは施設に戻されてしまいます。
私は絶対に施設に戻りたくはありません。
だから、命がけで今、ここに立っています。
障害者が当たり前に、地域で生きられるために。
介護保険と障害福祉の統合、反対していきたいと思っています。
2つ目は、『インクルーシブ教育』の実現です。
それは、障害児と健常児を分けないで、同じ場所で学び合う教育です。
私は18歳まで養護学校で育ち、外の世界を全く知りませんでした。
養護学校では全くと言っていいほど地域のことは教えられて来ませんでした。
同い年の健常者の友達ができたのは、19歳の地域に出てきてからです。
初めて私が外に出た時、外の広さや人の多さに驚かされました。
私は電車の切符の買い方も知らなかったし、車道と歩道の区別のわかりませんでした。
それ以上に、障害を持っている私をじろじろ見る周りの目に耐えられずに、当時の私は顔を上げることができませんでした。
地域のことを何も知らない自分に愕然とし、同時に重度障害者が地域で生きていく環境が何も整っていないこの社会に怒りを覚えました。
そんな私が、この社会に慣れていくのに35年もかかりました。
その分けられてきた弊害に、今も生きにくく、苦しんでいます。
現在文科省は「障害児とその家族が望むなら、普通学校に行くことは自由」だと言っています。
しかし実際には、普通学校には『バリアフリーが整っていない』という理由と、『専門家の職員がいない』というわけで、特別支援学校に入らざるを得ない子どもたちがたくさんいます。
障害児と健常児を分ける教育は、子ども達の支え合う関係を断ち切り、差別を簡単に生み出します。
そして支え合う心が育たず、虚しさが蔓延し、とても冷たい社会になってきています。
障害者を知らなくて育った人が、大人になって、どう接したらいいのか分からず、お互いの関係が作りにくくされている。
そんな現場の中で今、介護の職場の人手不足が深刻です。
『やまゆり園』の障害者殺傷事件の犯人が言ったように、「障害者は生きる価値がない」というとんでもない考え方を持ってしまう。
こんな現場を、根本から変えるためには、共に学び会える『インクルーシブ教育』が私は大切だと考えています。
介護保険と障害福祉の統合の反対と、インクルーシブ教育の実現。
この2つを、私は国会に提案していきたいと思っています。
これから私たち重度障害者が、皆さんと同じように、地域で当たり前に生きていく社会を作っていきたいと思います。
皆さんありがとうございました。
(2:07:00)
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